微細加工技術を用いることによって、量子力学的な効果が顕著に現れるような微小な電子回路 (メゾスコピック系) を作製することができます。私たちはメゾスコピック系の一つである量子ドットを用いて「近藤効果」の研究を行ってきました。
今回、低温科学研究センターからご依頼いただき、低温科学研究センター年報に、量子ドットにおける近藤効果についての解説記事「近藤効果と量子ドットと私」(→全文pdf)を寄稿しました*。本稿では、近藤効果について直感的な説明を行い、その歴史と意義について概観しています。さらに、量子ドットを用いた近藤効果の研究によって得られた成果の例として、近藤状態の位相と非平衡ゆらぎについて紹介しています。
エッセイ風の読み物です。どうぞお気軽にご覧ください。
2020年11月3日、近藤淳先生が文化勲章を受賞されました。心よりお祝い申し上げます。
量子ドットによる近藤効果の概略図。
量子ドットに一個だけ電子が閉じ込められている状況を考えてみましょう。
(a) 高温における状態。帯電効果(オンサイトのクーロン力)のため、2つ目の電子が入ることができない。そのため、量子ドットを電流が流れることができない。
(b) 低温における状態。量子ドット中の電子の持つスピンを遮蔽するように導線中の伝導電子が振る舞い、量子ドットと導線を橋渡しするように近藤状態が形成され、電流が流れるようになる。
(c) 電気伝導度の温度依存性。
* 執筆後に気づいたのですが、本稿のタイトルは平松愛理さんの有名な曲「部屋とYシャツと私」の影響を受けているようです(内容は無関係です)。