GaAs高移動度トランジスタを用いた低温動作可能な増幅器の開発についての研究成果をReview of Scientific Instruments誌に出版しました(論文)。
固体素子を流れる電流に含まれる「ゆらぎ(電流雑音)」から様々な情報が得られます(例えば解説記事pdf)。これまでに、微細加工で作られた極小の素子(メゾスコピック系)における雑音測定によって、量子ホール状態における分数電荷、超伝導におけるクーパー対、近藤状態における電子の散乱など、微視的な電子伝導メカニズムに関する様々な研究が行われてきました。
このような測定に必須となるのは、高精度に雑音を測定する技術です。市販の測定装置を用いた通常の電流測定・電圧測定とは異なり、電流雑音測定には市販の測定装置がないため、種々の工夫が必要になります。
今回、私たちは、自作のGaAs高電子移動度トランジスタ(HEMT)を用いた極低温増幅器を自作しました。熱雑音(ジョンソンナイキスト雑音)を用いた測定を行い、作製した増幅器が希釈冷凍機温度(0.1 K以下)でのメゾスコピック素子の電流雑音測定に適していることを示しました。私たちの増幅器は、これまで用いられてきた市販のHEMTを使用して作られた増幅器よりも、高精度・高効率な電流雑音測定を可能とするものです。
本成果は、NTT物性科学基礎研究所の橋坂昌幸氏らとの共同研究によります。