論文出版:量子ポイントコンタクトの巨大磁場応答

投稿者: | 2021年2月5日

量子ポイントコンタクトにおける量子輸送を測定し、Journal of the Physical Society of Japan誌に論文を出版しました(論文)。この成果は、兵庫医科大学東北大学パリ南大学・パリサクレー大学との共同研究です。

GaAs/AlGaAsヘテロ構造における二次元電子系を微細加工することによって、量子ポイントコンタクト(quantum point contact, QPC)と呼ばれる構造を作ることができます。QPCは、伝導電子の波長程度の間隙(すき間)を持つ量子伝導体(メゾスコピック系)であり、量子輸送を研究する典型的な舞台の一つです。

本研究では、二次元電子系が二層になっているヘテロ構造(二重量子井戸)におけるQPCを測定しました。電子系に垂直な磁場を印加することによって、伝導度が大きな影響を受けることを見出しました。ゼーマンエネルギーによるサブバンドエッジの分裂が0.16 Tで0.09 meVに達しました。このことはg因子が増強されることを示唆しています。実際に、観測されたg因子は自由電子の17.5倍に達しました。電子密度が低く、かつ、移動度が高いため、このような強い多体相互作用領域に到達したものと考えられます。