論文出版:単電子ポンプの作製とその動作

投稿者: | 2020年8月15日

半導体二次元電子系上に、ウェットエッチング法を用いて単電子ポンプを作製し、動作確認をした論文をReview of Scientific Instruments誌に発表しました(論文)。

決まったタイミングで電子を一粒ずつ流すことのできる電子回路(固体素子)のことを、単電子ポンプ(単電子源)と呼びます。単電子ポンプを研究する大きな動機は、電気素量eと周波数fを持つ量子電流標準を確立することにあります。2019年に実施された国際単位系(SI)の改定において、電流の単位アンペアが電気素量と周波数に基づくものに置き換えられました。したがって、単電子ポンプは今後の電流標準の維持と発展において中心的な役割を果たすことが期待されています。また、このような単電子ポンプは、電子を用いたフェルミオン量子光学実験においても重要です。

GaAs/AlGaAs二次元電子系上に単電子ポンプを作製するためには、サブマイクロメートルの量子細線をエッチングで作製する必要があります。本研究では、フォトリソグラフィと電子線リソグラフィを組み合わせて、微細構造と大面積構造を同時にエッチングできる技術を確立しました。作製した単電子ポンプは、一周期あたり決まった個数の電子を高周波で送出できることを実証しました。この技術を用いることで、微細加工プロセスの改善が図られ、加工時における二次元電子系の損傷リスクを低減することができました。

GaAs/AlGaAs二次元電子上に作製した単電子ポンプ