論文出版:トンネル効果における非平衡電流ゆらぎ

投稿者: | 2020年7月24日

スピン江崎ダイオードにおける非平衡電流ゆらぎに関する研究をPhys. Rev. B誌に出版しました(論文)。

固体中における電子のトンネル効果は代表的な電気伝導現象の一つであり、1950年代の江崎玲於奈博士以来、長い研究の歴史があります。また、ダイオード、ハードディスクの読み取りヘッド、フラッシュメモリなどの工学的な応用もされており、伝導の詳細を理解することは重要です。

トンネル障壁を横切る電子輸送は、界面の条件、材料の特性、デバイス形状などの様々な原因に支配されています。私たちは、非平衡電流ゆらぎ(ショット雑音)を測定することにより、(Ga,Mn)As/GaAsベースのスピン江崎ダイオード接合(下図)における電子輸送を調べました。単一の素子においてバイアス電圧を連続的に変化させることで、従来型の直接トンネリング、中間ギャップ局所状態を介した過剰電流伝導、熱励起電流伝導という複数の伝導領域を観測しました。測定の結果、直接トンネリングでは、ファノ因子(雑音の大きさを表す無次元量)は1であるのに対し、過剰電流領域ではファノ因子が顕著に減少することを見出しました。このような研究は、トンネル伝導の詳細を解明するのに役立ちます。

本研究は東北大学 大学院工学研究科 新田研究室ドイツ・レーゲンスブルグ大学Dieter Weiss研究室などとの共同研究の成果です。