論文出版:非線形領域にあるスピントルク発振器

投稿者: | 2020年7月21日

非線形領域での単一スピントルク発振器(STO)の数値解析の結果をAIP Advances誌に出版しました(論文)。

磁気トンネル接合は単一スピントルク発振器(spin-torque oscillator, STO)として振る舞います。その振る舞いを非線形領域に拡張して数値計算で調べました。その結果、非線形領域では磁化が大きな角度で歳差運動(下図)することによって、複数の発振モードが発生することを明らかにしました。この現象は、フィードバック回路や隣接する振動子との磁気結合がなくても生じるものであり、単一のSTOが内包する本質的な性質の発現であると言えます。また、この現象は、我々が先日発表した実験の論文の結果とも密接な関係があります(論文出版:スピン流で駆動される非線形ダイナミクス)。このような知見は、STOを用いた新しいスピントロニクス論理回路の開発に役に立ちます。

図:発振状態のおける磁化方向の軌跡をプロットしたもの。線形領域を黒色、非線形領域を赤色で示す。非線形領域では軌跡が大きくなるとともに周期的にゆらいでいることがわかる。

本研究は、物質・材料研究機構(NIMS) 磁性・スピントロニクス材料研究拠点との共同研究です。