二層二次元電子系上に作製された量子ポイントコンタクトにおける伝導度の量子化を調べた研究をPhys. Rev. B誌に出版しました(論文)。この成果は、兵庫医科大学、東北大学、パリ南大学・パリサクレー大学との共同研究です。
実験では、GaAs/AlGaAsトンネル結合二重量子井戸上に作製された量子ポイントコンタクト(Bilayer QPC)を用いました(下図参照)。この素子は、伝導度2e2/hで明瞭な量子化コンダクタンスを示します。伝導度が2e2/h以下で観測される微分伝導度のダイアモンド構造の中に3つのピークがあることを見出しました。さらに、ショット雑音測定の結果も用いて、このピーク構造がサブバンドの分散関係に基づくことを示しました。論文では、この現象が、二重井戸のトンネルバリアを横切るポテンシャル勾配に起因するラシュバ型のスピン軌道相互作用によって説明される、ということを提案しました。
本研究は、GaAs/AlGaAsのヘテロ構造を工夫することによってスピン軌道相互作用を増強し利用できることを意味しており、スピントロニクスの基礎研究に役に立つものです。