論文出版:ファンデルワールス強磁性体

投稿者: | 2020年3月24日

近年、一原子あるいは数原子の厚みしかない二次元物質の研究が盛んに行われています。そのような物質は、二次元的な原子層がファンデルワールス力によって積層した構造となっています。グラファイトから取り出されるグラフェンは、その代表例です。このような二次元物質の中には、二次元性の強い超伝導や強磁性を示す場合もあり、それぞれ、ファンデルワールス超伝導体やファンデルワールス強磁性体と呼ばれて、興味をもたれています。Fe5GeTe2 はファンデルワールス強磁性体の一つであり、熱心な研究が行われています。

私たちは、Fe5GeTe2を用いて、数原子層の厚みしか持たない極薄デバイスを作製し、磁場中で電気抵抗測定を行い、その性質を調べました。その結果、バルクの状態(マクロなサイズの Fe5GeTe2 結晶)にある場合と比べて、数原子層の極薄デバイスに加工することによって、垂直磁気異方性が強くなることを見出しました。さらに高温でクエンチした試料の方が、垂直磁気異方性がより強くなることを発見しました。このような研究は、極薄の磁性体の性質を制御する手法の開発につながります。

本研究は、新見康洋准教授(大阪大学大学院理学研究科)、沖縄科学技術大学院大学 岡田佳憲准教授のグループとの共同研究によって行われました(論文)。