論文出版:磁気ゆらぎによる巨大磁気抵抗効果

投稿者: | 2020年2月26日

二次元三角格子反強磁性体 Ag2CrO2の微小素子における巨大な磁気抵抗効果についての研究をScientific Reports誌に出版しました。磁気抵抗の起源はこの物質特有の磁気ゆらぎにあります。本研究は、新見康洋准教授(大阪大学大学院理学研究科)が主導し、北海道大学吉田准教授東京大学石塚助教との共同研究によって行われました (論文プレスリリース) 。


反強磁性体を使用したスピントロニクスデバイスは、将来のアプリケーションの有望な候補です。最近、反強磁性体ベースのデバイスで多くの興味深い物理的性質が報告されています。本論文は、マイクロメートルサイズの三角格子反強磁性体 Ag2CrO2 がバタフライ型(蝶の羽の形)をした特殊な磁気抵抗を示すことを報告するものです(デバイスの電子顕微鏡写真とバタフライ型の磁気抵抗を下図に示します)。この物質は、反強磁性的に結合したS = 3/2スピンの2次元三角格子CrO2層と、高い導電性を持つAg2層で構成されています。バタフライ型の磁気抵抗は、磁場がCrO2平面に垂直に印加された状況で、磁気秩序温度付近でのみ発現します。この現象は、従来の磁性材料で観察される特徴とは異なるユニークなものです。しかも、その磁気抵抗比は最大で約15%であり、単一結晶が低磁場下で示す磁気抵抗としては非常に大きなものです。論文でスピンのゆらぎが重要な役割を果たしていることを理論的に明らかにしました。

本研究は、磁気ゆらぎという新しい機構に基づいた巨大磁気抵抗効果を利用することによって、単一結晶のみを利用した磁気メモリデバイスへの応用につながる一歩となる成果です。


本研究成果は、米国科学誌Scientific Reportsに、2月13日(木)19時(日本時間)に公開されました。