論文出版:広帯域マイクロ波イメージングに成功

投稿者: | 2023年11月21日

ダイヤモンドのNV中心を用いてマイクロ波を広帯域でイメージングする手法開発に成功した成果をApplied Physics Letters誌に発表しました(→論文)。本研究は同誌のEditor’s Pickに選定されました。


ダイヤモンドのNV中心は、有望視されている量子センサの一つです。原子サイズの小ささを持つ方位磁針のように使うことができます。私たちは、この特徴を使って物質の磁気的な性質や熱輸送を、あたかも顕微鏡で観察するかのように、観測したいと考えています。

私たちはNV中心を用いたマイクロ波のイメージングを行いました。NV中心は、その特性上、共鳴周波数2.87GHzのマイクロ波に敏感で、これを利用してマイクロ波デバイスの評価や磁性体中のマグノンの可視化などが可能です。しかし、従来の手法には共鳴周波数付近以外では測定が難しいという制約がありました。磁場によって共鳴周波数を変化させることはできますが、この手法は測定対象の本来の性質を変化させてしまう可能性があります(たとえば、磁場に依存する磁気特性を持つ材料では困難です)。

そこで新しいプロトコルとして提案されたのがACゼーマン効果を検出する方法です。ACゼーマン効果とは、マイクロ波照射下でNV中心の共鳴周波数がわずかにシフトすることを指します。この効果自体は実証されていましたが、イメージング測定に使えるかどうかは分かっていませんでした。

私たちは広視野顕微鏡と多数のNV中心(アンサンブルNV中心)を用いて、ACゼーマン効果の検出に成功しました。図にACゼーマン効果を測定するプロトコルと広視野顕微鏡の概念図を示します。マイクロ波平面リングアンテナの周波数応答やオメガ型アンテナ上のマイクロ波振幅の空間分布を広帯域に視覚化できることを示しました。更に、ダイナミックデカップリングと呼ばれる手法を導入することで感度を大幅に向上させ、微小領域における広帯域なマイクロ波イメージングを可能にしました。

この成果は、アンサンブルNV中心を駆使した新しい広帯域・広視野マイクロ波センシングの基礎を築くものであり、微小な領域における電磁波の振る舞いや磁気ダイナミクス探求に寄与する大切な一歩となります。