量子センサをナノスケールのサイズで自在に並べる技術の開発に成功した成果をApplied Physics Letters誌に発表しました(→論文)。
六方晶窒化ホウ素(hBN)中のホウ素空孔欠陥は、室温においても光学的に量子状態を読み出すことができ、量子センサとして磁場測定に利用できます。この磁場に敏感な量子センサは、まるで微小な「方位磁針」のように振る舞います。本研究では、hBNのナノ薄膜に作製した量子センサをナノスケールで配列することによって、高分解能な磁場イメージングを実証しました。
具体的には、ヘリウムイオン顕微鏡からのヘリウムイオンビームを狙った場所に 100 nm×100 nm サイズで照射することで、そのスポット内に量子センサを生成しました。このような微小スポットを配列させ、それぞれのスポットから得られる磁場データを適切に処理することによって、高空間分解能で磁場をイメージングできることを示しました。
本研究は、測定対象表面の狙った位置にナノサイズの方位磁針を作る技術を確立したものであり、局所磁場や電流分布を調べる手法として、磁性体、超伝導体、電子デバイスなど幅広い研究分野での利用が期待されます。より詳しくは プレスリリース「量子センサを自在に並べる!――狙った位置にナノサイズの“方位磁針”をつくる――」も御覧ください。
本成果は、物質・材料研究機構(NIMS)の中払周主幹研究員(研究当時、現職:東京工科大学教授)、岩崎拓哉独立研究者、渡邊賢司主席研究員、谷口尚理事、産業技術総合研究所の小川真一客員研究員、森田行則研究グループ長との共同研究によります。
2023/09/20 理学部ニュース2023年9月号で紹介しました。量子センサについての平易な解説にもなっています。ぜひ御覧ください(→記事「量子センサを自在に並べる!」)。
2023/06/19 日刊工業新聞に掲載されました。「東大、hBN欠陥量子センサーをナノ配置 微小な局所磁場計測」(20面)
2023/06/15 本論文が AIP Publishing Showcase に選定されました。
Congratulations – your article Magnetic field imaging by hBN quantum sensor nanoarray has been selected to appear in the AIP Publishing Showcase on Kudos. – AIP Publishing and Kudos